家具へのこだわりQuality

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私たちの家具作りは、丸太を仕入れるところから始まります。
この丸太は岩手県の山奥で長い時間をかけて育ったもの。
材木がまだ「樹」の姿を残し、その体に樹液をたたえた状態での出会いです。

1.入札

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岩手県森林組合連合会が運営する盛岡木材流通センターには、岩手県内で伐採された木が集まってきます。その種類はナラ、クリ、セン、クルミ、ケヤキ、トチ、ブナ、カバ、カエデ、サクラ、ホオノキ、他にもまだまだたくさんあります。私たちはここから丸太を仕入れます。つまり岩手産の広葉樹です。
値段はついておらず入札方式。太さ、枝やクサレ、節の有無、年輪の幅、曲がりの大きさなど熟練の目利きで見極め、「この丸太は○○円だな」と予想し、その値段を登録します。その丸太を欲しい業者たちが同じように値段を登録し、もっとも高い値段をつけた業者が買うことができるのです。競りやオークションと違って、他の業者がいくらの値をつけたのかわからない一発勝負ですから、気が抜けません。
入札は社長の工藤宏太のみが行っており、私たちが家具にする材木は全て丸太の状態から目を通しています。

2.輸送

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運送会社さんに委託し、100キロ近い道程を輸送します。丸太はまだ樹液を含み、かなりの重さ。山間の岩泉町ですから、途中には坂道がたくさんあります。難所だった峠がトンネルになったとはいえ、運転手さんは大変です。
ところで、この材木はどうやって積み降ろしするかわかりますか?トラックのお尻からクレーンのようなアームが伸びて丸太の上に横たわっていますが、この先はマジックハンドのように物をつかめるようになっています。オペレーターさんはそれを操作して、丸太を1本ずつ積み上げていくのです。ずれてしまえば落下事故の危険がありますし、乱暴にすれば丸太に傷がついてしまいます。大きくとも繊細な作業なんです。

3.小石取り

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丸太の皮には、伐採した時や市場で並べられていた時などに泥や小石が食い込んでいます。それを製材前に竹ぼうきで掃き落としておきます。製材機は刃物。そしてその切れ味が仕上がりに影響します。一度小石を切ってしまうと、その帯鋸刃は研磨しなおさなければなりません。1日に5個小石にあたってしまうと、まだ新しい刃を5本も取り替えるはめになります。このお掃除はとても重要な作業なんです。

4.目通し

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入札の時点で、その丸太をテーブル材にするか、椅子材にするか、サイドボードなどにするか、だいたい予測をつけてあります。さらに製材をする前にあらためて1本ずつそれを検討。製材する際には挽く厚さを決め、台車に固定する丸太の角度を調整します。
丸太の角度や向きをわずか数度変えるだけで、採れる板の木目は変わってきます。また、乾燥時に生じる反りや歪みにも影響してくるため、慎重な見極めが必要なのです。全ての丸太はこうして1本ずつ、その都度目を通し、角度を微調整しながら製材に臨みます。重要な丸太については、これも社長の工藤宏太がつきっきりで目通しを行います。

5.製材

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いよいよ製材です。当社は基本的に板目挽き。1本1本の丸太から採れる板の個性をしっかりと引き出していきます。
丸太によっては、採れた板を1枚ずつチェックしながらそのつど挽く板の厚さを変更したり、急遽途中で角度を変えることもあります。材木の声を聞きながら、丁寧に原板を切り出していくのです。
完成したテーブル天板の耳の部分が、多少えぐり取られていることがあります。そこは多くの場合、この製材機に丸太を固定していた鋼鉄の爪の跡です。

製材機

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この製材機は昭和33年製。当社の前身である製材所で使われていたもので、静岡県から仕入れてきたそうです。鋼鉄製の本体はまるで蒸気機関車のような迫力があり、半世紀を超えてなおがっしりとそびえ立っています。一方、台車は木製。分厚い木の台車本体に鋼鉄の装置が固定され、重い丸太を受け止めます。この製材機には、コンピュータの類が一切使われておらず、完全なアナログです。効率が劣るぶん、材木の見極めがしっかりできます。

6.番号テープ貼り付け

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テーブル天板などの用途として挽いた厚板は、丸太の時の形に揃え、順番通りに番号テープを打ち込みます。
乾燥させるときには、この順番が一旦バラバラになってしまいます。まちまちな材でテーブル天板を作っては、木目も統一感がなくなってしまい、長年愛していただけるテーブルができません。1枚のテーブル天板はできるだけ同じ丸太から材を取り、矧ぎ合わせられるよう、こうして目印をつけるのです。

7.桟積み

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製材した板は、厚さごとにまとめて並べ、1段ごとに角棒=桟を挟んで積み上げていきます。桟を入れる理由は、風通しを良くするため。重なったままでは水分が抜けず、乾燥度合いにばらつきがでてしまったり、腐ってしまったりします。そのためこうして隙間を空けるのです。隣りあった板の間も同じように適度に隙間を空けます。
桟は基本的に同じ寸法で作り、均一に並べ、重ねる時も上下同じ位置に桟を置くようにしなければなりません。ずれてしまうと板にかかる重さも分散してしまうので、乾燥しているうちに板が波打って曲がってしまいます。また、この状態でトラックに積んで移動したり、乾燥庫に入れたりしますので、トラックの荷台や乾燥庫の寸法を考慮しながら並べる必要もあります。天然乾燥の前のとても重要な作業です。

8.天然乾燥

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きれいに積まれた材木は、土場(どば)と呼ばれる屋外の材木置場で長い天然乾燥に入ります。トタンで仮初の屋根をかけるだけで、材木自体は24時間365日、大気に晒され続けます。春先の柔らかい日差しから、梅雨時のじめじめした湿度の高い空気、真夏の干からびるような暑さ、秋の引き締まった寒さ、そして真冬の凍てつく空気といった、日本の四季の大気に材木をなじませるのです。期間は厚さや材質によって異なりますが、おおまかには1年から3年。この間に少しずつ材木の水分が抜け、枝葉の重さを支えていた幹の役割から開放され、「樹」から「材木」へと変質していきます。
天然の大気で乾燥を進ませることから天然乾燥または自然乾燥、材木に四季(シーズン)を通じた気候を体感させることからシーズニングとも言います。

材木の”暴れ”

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木は材木になってからも”動き”ます。まず、伐採されたとき。山の傾斜や風雪に耐えてその体を支える木は、チェーンソーで切られた時に大きく割れる(裂ける)ことがあります。これは針葉樹より広葉樹に多く、ベテランの作業員が大けがをすることさえあります。次に製材されたとき。これも同じように大きく裂けることがあり、特に曲がった材ですと製材したばかりの板が真っ二つになることもしばしばあります。そして乾燥させるとき。製材された断面が大気に晒され、四季の気候をその身に受けるうちに板はストレッチでもするように反り、ねじれ、割れます。この動きを「暴れる」と表現します。

9.蒸気乾燥

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数年に及ぶ天然乾燥を終え、四季の移ろいに体をなじませた材木は、仕上げの蒸気乾燥に入ります。蒸気乾燥は文字通り高温の蒸気で蒸して行う方法で、湿式サウナのようなものです。
蒸気をかけると材木が濡れて湿ってしまい、乾燥という言葉にそぐわないように感じますが、そうではありません。木が濡れているのは水というより樹液です。水はすぐに乾きますが、樹液はいろいろな成分が含まれていますから、なかなか内部までは乾きません。天然乾燥はこの樹液の状態を落ち着かせることが大切で、最後の蒸気乾燥でさらに材木に「汗をかかせ」、仕上げるのです。
天然乾燥の間に材木にカミキリムシの幼虫などが住みつくこともありますが、この段階でサヨウナラとなります。

10.仕分け・墨付け

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蒸気乾燥から上がった材のうち、テーブルなどに使われる厚板は社長の工藤宏太が全てチェックします。そして1枚1枚について用途を決め、寸法、割れの長さなどを書き込んでいきます。
この時点で、製材時に振り分けた番号シールを元に同じ丸太からとれた板を基本としてテーブル天板の組み合わせを作ります。木口に割れが多ければそれを切り除いた短い長さとし、割れが少なければできるだけ長いテーブルとします。幅広い板なら2枚ハギ、狭い板なら3枚ハギのテーブルができます。また、3枚ハギのテーブルを作る場合、耳(皮がついていた不定形の部分)の形が面白ければサイドに、真っ直ぐですっきりしすぎていれば耳を切り落として中央に配置しますが、このバランスも木目を見ながら一組一組決めていきます。
こういう作り方をしていますので、私たちのテーブルは長さ、幅とも一定ではありません。板一枚一枚について、その個性をもっとも活かせる用途で、さらに無駄に切り捨てる事のないように組み合わせているためです。

11.写真撮り

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矧ぎ合わせる側の耳を落とし、割れのある部分などを切り落としてスリムになった材木は、樹種ごとに通し番号を付け、1枚ずつ(ハギ板のテーブル天板などは矧ぎ合わせる板をまとめて)写真を撮影します。
私たちの家具は、材木が乾燥からあがってすぐに作り始めるわけではありません。作る家具に合わせ、またお客様の希望にあわせてその時ごとにもっとも似合う板を選び出して使っています。ですので、これらの材木はこれから数ヶ月、長いものでは10年以上倉庫で寝かせることになります。
いざ使うときにまた倉庫から板を運びだして選んでいては時間も手間暇も膨大にかかってしまいますので、あらかじめ写真をとっておき、アルバムに整理して、その写真を見ながら選んでいきます。

12.保管

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このあと材木は、倉庫の中で数ヶ月から十数年、長いもので数十年にわたって保管されます。材木倉庫は万が一火事になるとそのすべてが失われてしまいますので、倉庫は数カ所に分散されています。
私たちは材木を、板の個性を引き出す板目に挽いています。また、節や割れなどもむやみに切り捨てず、木の個性として残しています。上でも書きましたように、大きさは板の状態で決まり、長さや幅もまちまちです。そのため、万人向けのテーブルはなかなかできません。そのかわり、一組一組のお客様それぞれの心に響く個性を持った板が生まれます。
唯一のお客様との一期一会の出会いを待ちながら、原板は眠り続けます。

ここまでは材木の準備までの流れをご紹介しました。
私たちが使う材木の大半は、このような流れを経て倉庫に保管されます。
サイドボードなどに使う薄めの板なども、6,10,11のみ割愛されますがその他の工程は同じです。