岩泉純木通信Iwaizumi Jyunboku Times

BLOG|ある原板と座卓の生まれ変わり

暖かい4月の午後。
軽トラックのご夫妻が工房にいらっしゃいました。

『先日お電話した○○です。津波で波をかぶった座卓と、材木屋さんから買った一枚板をテーブルにリフォームしてもらいたいんです。まずは実物を見たいとのことだったので、持ってきました』

隣の宮古市のご夫妻でした。
詳しくお聞きすると、震災でご自宅が被災してしまい、そこで使っていた一枚板の座卓も波を被り、傷もついて脚も壊れてしまったそうです。
そこでとりあえず建具屋さんに仮の脚を作ってもらったのだけれど、このたび新築なさったので、そこに入れるにあたりしっかりと作りなおして欲しいとのご希望でした。
とても木が好きなご家族らしく、それとは別に宮城県の材木屋さんから栃の木の一枚板もご購入。
そちらは加工していない原板なので、これもテーブルにして欲しいとのご希望です。

職人と現物を確認したところ、
栃の一枚板は
・しっかり乾燥された材木なのでこのまま使える
・少々クサレがあり、柔らかくなっているところがあるが、ここを削り取るとかなり形も変わってしまうため、軽く樹脂で補強すればなんとかなるか
座卓の方は
・合板ではなく、無垢材の一枚板である
・輪切りのものではない
・仮脚は金具などで乱暴に固定されているわけではなさそうなので、なんとかきれいに外せそう
・厚さもしっかりしているので、暴れることもなさそう
というところでまとまりました。

こういったご依頼はすぐに受けられる場合とそうではない場合があります。
例えば、無垢材だと削れますが、合板だと表面の木目部分はごくごく薄いため、削れません。
丸太を製材しただけの生材は、数年間の乾燥期間を経なければ使うことができません。
今回はそのへんをすべてクリアしており、安心してお受けすることができました。

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まずは栃の一枚板。
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実に長さ220cm、幅(奥行)も広いところで1m以上、狭いところでも80cmもあります。
厚さにしても8cmほどあり、うちの手持ちの原板ではここまで厚く挽いたものはほとんどありません。
形も適度に特徴的で、たいへん立派なものでした。

わかりやすいようにフォークリフトに乗せて、全体の形をお見せしてご相談。
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気になったところとして、この写真の下側の耳は比較的滑らかですが、上側の特に左右の角あたりが中央より飛び出ているため、ここはある程度切ってしまい、なめらかにして欲しいというご希望を伺いました。

途中からはメールで写真や絵をやり取りしてご相談しました。
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左端中央の凹みはこの板の特徴でアクセントになるし、お部屋にもゆとりがあり短くしなくてもよいとのことで、残すことに。

それを元に本加工。
気になっていた左右の耳の出っ張りはチェーンソーで落とし、そこからは手加工で耳らしくなめらかに仕上げます。
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大型機械のムービングプレーナーで全体をざっと水平に削ったら、あとはひたすら丁寧に鉋(かんな)がけです。
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仕上げ削りも兼ねますから、ここは手鉋が必要。
ベテランが黙々と体全体で鉋を動かします。

サンディングを経て、塗装。
今回は差し色がアクセントにもなり、ネガティブな色(グレーなど)が入っていない綺麗な材だったので、クリアオイルを塗っていきます。
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遠近法でより大きく見えますが、実物もこれくらいの迫力がありました。

仕上がりは最後に・・・。

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次は座卓です。
津波をかぶり、あちこちにぶつかったため傷だらけではありましたが、分厚い科学塗料によるコーティングのおかげで木材本体にはほとんど傷が及んでいませんでした。
自然塗料派のうちとしてはやや複雑な思いです(笑)
とはいえ、うちのテーブルもご依頼を受けて何件か被災したものを削り直しました。
結果そのすべてがきれいに復活し、ダメだったものはありません。
壊れてもだめだと思わずにぜひご相談ください。

建具屋さんに作ってもらったという仮足はそこそこ見栄えも良く、丈夫でしたが、今回は板の塗装も削り落とすため一旦外します。
万が一、中に金具が仕込んであると鋸(のこ、のこぎり)がダメになってしまうため何度かに分けて慎重に切ってくれましたが、幸い金具はありませんでした。
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脚と板とが組み合わされていたホゾ穴はきれいに塞ぐため、丁寧に切り取り、削り取っていきます。

無事に足が取れました。
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このテカリ、いかにもコーティングだなという感じ。
漆塗りなどなら削るのを躊躇しますが、今回は遠慮なく削っていきます。
おや?ホゾ穴から覗く材木の色が・・・

ムービングプレーナーで塗装を削り取り、さらに鉋掛けしてもらいましたらこんな色になりました。
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もっと濃い色かと思いましたらなんとなんと、明るい色です。

しかしこの板、きれいです。
陽炎のような杢も入っていますし、たまに濃い色で隠されていることがある虫喰いや埋め、シミのようなものもありません。
ご相談の結果、このままクリアオイルで仕上げることに。
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足が固定されていたホゾ穴も、ベテラン職人にかかればこの通り、ぴったりと塞がれています。
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いよいよ納品日。
厚かましくも一人で伺って、ご主人にお手伝いいただいて設置することとさせていただきました。
宮古市のやや郊外にある、とても木がふんだんに使ってある素敵なお家でした。
立派なケヤキの柱があり、驚いて伺いましたら被災した家から移設したものだそうです。
木を愛するお客さんだからこそ、いい材木をお持ちだったんだなあと納得です。

まずは栃のダイニングテーブルから。
「立派ねえ!」
という奥様の声が胸が踊ります。
娘さんにモデルになっていただいて一枚。
素敵です!
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テーブル自体はかなり大きいのですが、ゆったりとした間取りの広いお部屋でしたので、これでもちょうどいいくらいです。
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後ろの壁は無垢材で貼られており、あまり写っていませんがフローリングも心地よいオイルフィニッシュの無垢材でした。

栃ならではの白さに、複数の赤みの色、差し色が映えます。
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いつまで見ても見飽きません。

そして座卓は当初の濃い色から、材木の美しさが引き立つクリアオイル仕上げに。
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明るい雰囲気の素敵なお部屋でしたし、この材木自体も適度に褐色がかっていましたので、結果的に漆塗りや色オイル塗りにしなくて正解だったと思います。
お客さんのセンスが光ります。

濃い色の時も見えていましたが、今はもっと杢が引き立ちます。
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おかげさまで、とても魅力的なテーブルを作らせていただきました。
こうしてみると、うちの仕事は家具作りとはいえ、材木が本来持っている魅力を損なわず、しっかり表現してあげることが本業なんだなあと実感します。
素敵な材木をご提供いただいたN様、ありがとうございました。

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帰りがけに足を伸ばし、宮古市田老=旧田老町の真崎海岸へ。
三王岩の近くの海は、普段見ることのできない美しい青さをたたえておりました。
日差しの角度で色が変わって見えるため、この時間帯が最もきれいなんだそうです。
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