岩泉純木通信Iwaizumi Jyunboku Times

コラム|板が呼吸するはなし

生き物とそうではないものと、違いはなんだと思います?

私が今、この質問を受けたとしたら、「息をすること」。
ちょっと硬い言い方をすれば、「呼吸すること」と答えます。
どうでしょう、同じ意見になりました?
細胞がどうとか、有機物がどうとか、遺伝子がどうのとか、
いろいろな考え方はありますね。
べつに生物学の勉強ではないので、今回はとりあえず、
「息をすること」にしておきましょう。

ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、
みんなみんな生きている=息をしています。

じゃあ草や木は息をしてるんでしょうか?
うーん、草や木には口がないんですが、息ができるんでしょうかね。

はい、草や木も生き物ですから、息をします。
木や草の呼吸って、二酸化炭素を吸って酸素を吐くことだと
思われがちなんですが、それとは別に、
じつは木や草だって、酸素を吸って二酸化炭素を吐く、
私たちヒトとおなじ呼吸をするんです。
私の記憶が確かならば、中学校の生物の授業で教わったと思います。
・・・中学生なんて20年以上も前の話になっちゃいますが。

ところで、私たちみたいな木をあつかう仕事をしている人たちが、
「木の板は呼吸する」なんて言うことがあります。
へえ、木って板になってからも息をして生き続けるんだ!
・・・と思うのはまちがい。
「(生きている)木の呼吸」と、「(材木になった)板の呼吸」とは、
別のことです。

そもそも、生きている木には口がありませんが、
小さな小さな穴が葉っぱにあって、そこから息をします。
ですから、根っこが土に植わっていても、
葉っぱがぜんぶなくなってしまえば、
息ができなくなってしまいます。

木の板には葉っぱがありませんから、息のしようがありません。
じゃあ、板の呼吸っていうのはいったいなんなのか、という、
ここからが本題なんですが、結論から言ってしまうと、

「湿気を吸い込んだり吐き出したりすること」

なんです。

たとえば、梅雨どきから夏場は、じめじめして湿度が高いですね。
こういうときには、木の板は空気の中の水分を吸い込みます。
冬は空気が乾燥して、お肌がかさかさになっちゃいますが、
こういうときには、木の板は貯めこんだ水分を
空気の中に吐き出します。
このことを「呼吸」に例えてるわけです。

ただ、板がじぶんで吸ったり吐いたりしているのではなくて、
どちらかというと、水分が勝手に木の繊維の中に出入りしている、
と言うほうが、正しいんじゃないかと思います。

除湿機や加湿器のかわりに、お部屋に木の板を置いて湿度コントロール!
となればいいんですが、さすがにそこまでは
強力じゃないと思います(笑)
ただそれでも、湿度の変化が穏やかになるということはあって、
木がふんだんに使われたお家に住んでいると、冬のお肌のうるおいが
保たれやすいかもしれません。

今どきの季節、無垢材の家具のさわり心地が、いつもよりもさらに
ここちよく感じられることがありますが、
これは、うっすらと手にかいた汗を木の板が吸い込んでくれて、
じとっとした肌が、さらっとするからなんでしょう。
さわり心地って、表面がガサガサしてるか、つるつるしているか、
そういうこと以外にも、いろいろなことが重なりあって生まれるみたいです。

おっと、忘れていました。
木の板に化学塗料をたっぷり塗ってしまうと、
表面がすっかり覆われてしまい、「板の呼吸」が止まってしまいます。
そんな理由もあって、うちでは化学塗料ではなく、自然塗料を使っています。
せっかく木の家具を使うんですから、表面をぴったり覆った
ビニールやプラスチックではなくて、木のからだのてざわりを
みなさんも楽しんでみませんか?

20160809

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